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2013年5月23日 (木)

梅原猛『人類哲学序説』

 福島第一原発事故後、自らの過去も含めて痛恨の想いを吐露していた梅原猛さんの新著で、講演をベースに加筆したもの(岩波新書)。
 大震災と原発事故がこの本を書かせることを決意させたと、あとがきに記している。「原子力発電を主なエネルギー源とする現代文明のあり方をそのものが問われなければならない」と。事故はまさに近現代の極みに逢着した事態であり、同意するしかない。
Photo  『人類哲学序説』というタイトルについては、つぎのようにコメントしている。「哲学」とはギリシャ生まれで、近代西洋で発展してきたもの。ゆえにヨーロッパを超えた「人類哲学」はこれまで語られたことがなかった。また序説とは、これから本格的に西洋文明(西洋哲学)を体系的に論じたものを書くつもりなので、本書は「序説」にすぎないと。

 デカルトから始まる近代哲学・科学を批判し、さらに近代を批判したはずのニーチェ、さらにハイデガーにまで疑問を投げかける。このあたりもまったく同感である。さらにこうしたヨーロッパ文明に大きな影響を与えたヘブライズムとヘレニズムに遡り、これを裏づける。
 他方で、日本文化の原理を探り、天台密教(台密)を基本として挙げる。台密は「草木国土悉皆成仏」で表現されるという。動物はもとより、草木も仏性をもち成仏できるとする思想。縄文文化を源流として草木国土悉皆成仏の考えが生みだされた。ヨーロッパ文明が否定的にとらえる「森」を大切にする森の思想=循環の思想にこそ、これからの可能性を見いだす。
 草木国土悉皆成仏の思想と、(西欧がその影響を否定しようとしてきた)太陽信仰をもつエジプト文明、さらにアジア、日本の太陽崇拝の思想に注目し、現代文明を根底から批判し、新しい文明の方向を追求する。その序説として、本書が位置づけられている。

 かつて梅原さんは、和辻哲郎の『風土』を高く評価したうえで、そこには「生産」の概念がまったく欠落している、と鋭い指摘をしていた。ご高齢でたいへんと思うが、数歩でも進んでその成果(本論)を発表していただきたいと願う。もちろん、わたしも自分なりに歩を進めるつもりでいる。(写真は経産省前テント村行動)
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