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2013年3月16日 (土)

西武HDとサーベラス

~投資者の利益と「企業価値」~

 西武鉄道やプリンスホテルを傘下にもつ西武ホールディングス(HD)の再上場をめぐって、同社と筆頭株主の投資会社、アメリカのサーベラスとの間で対立が泥沼化している、と新聞が伝えている。サーベラスがTOBをかけて出資比率を三分の一超にして経営方針を変えて「企業価値」を高めて、再上場時の「上場益」を大幅に増やしたい狙いのようだ。ゆえに不採算部門の切り捨てなどをサーベラスは迫る。

 具体的には、①西武多摩川線、山口線、秩父線など不採算路線の廃止 ②特急料金の引き上げ ③プリンスホテルのサービス料金を上げる(10%を20%へ) ④西武ライオンズの売却 ⑤JR品川駅周辺の再開発案の策定などを挙げているようだ。
 おおむねエンドユーザの生活の足を切り捨てるか、その経済負担をもっと高くしなさいというものだ。②と③などじつに「セコイ」というしかない。これが、「企業価値」を高めるための投資会社メンバーが、「実物投資空間」から利益をひねり出すために思い付いた方法なのだ。問題は極めて多いが、なかでも路線の廃止というリストラは、その沿線の住民にとっては重大な問題だろう。

 そもそもの発端は10年ほど前の有価証券報告書の虚偽記載問題にまで遡るのだろうし、西武HDにも不動産なども含めさまざまな経営上の思惑もあるだろうけれど、少なくとも現経営陣が「地元に根ざした鉄道会社として、路線廃止は考えられない」との見解はどうあれまっとうだ。

 サーベラスがとりまとめる投資家のほとんどはアメリカはじめ海外の人だろうし、とにかく「目先の利益」が得られば、異国の一地域の生活路線なんてどうだろうが関係のないことだ。あるいは特急料金やホテルサービス料をちょっと値上がりさせたという事実を作り出せばよいのだろう。それが当該企業や、その商品・サービスを購入している人たちにとっての影響や、さらに企業自体の数字に中長期的にどんな影響を与えるかは、考慮外となる。売却益取得後のことなぞ関係ない。上場という瞬間に「企業価値」が上がっていれば、どんな方法でもよい。目先の利益(上場益)を増大させるためには、その鉄道を利用する地域住民の生活など切り捨てろ、という。端的にいえば、実体など関係ない、投資(貨幣)がとにかく増えて戻ってくればよい、ということだろう。

 こうした株主至上主義を支持する人が国内にもいるようで、サーベラスは、日本の元金融庁長官、元日本郵政公社総裁らを取締役として推薦するという。
 高めたい「企業価値」とは、いったい誰にとっての、どういう価値なのか。わたしたちは誰もが「資本の論理」から免れることはできないけれど、リーマンショック以降も、構造はまったく変わっていない。
 ちなみにサーベラスとはギリシャ神話の「地獄の番犬ケルベロス」の英語読みで、「底なし穴の霊」を意味することを、ウィキペディアで教えられた。

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