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2009年12月20日 (日)

2009年の5冊

 今年も古い本を読むことがほとんどだったなかで、今年出たものから5冊(枚)。

◎村上春樹『1Q84』book1、book2(新潮社刊)
 今年最大のベストセラーにはさまざまな批評が溢れているが、読めばわかるようにbook1、book2は当然次の物語の展開を求めている。来年以降に出るであろうBOOK3で、作家は自身の課題にひとつの決着を付けるべく格闘することだろう(わたしのコメントは、『村上春樹と小阪修平の1968年』に記した通り)。

フランシーヌ・デュ・プレシックス・グレイ『シモーヌ・ヴェイユ』上野直子訳(岩波書店刊)
Weilself4_2  学生時代、師である哲学者アランから「火星人」と呼ばれ、クラスメイトからは傾倒していたカントをもじって「スカートをはいた定言命令」と渾名を付けられ、学校当局からは「赤い乙女」と批判され遠ざけられたりもしていたシモーヌ・ヴェイユ。
 彼女については、サイトの「スローワーク論」ノートで6回にわたって触れた。その折りに彼女自身の著作と併せて、この評伝『シモーヌ・ヴェイユ』も読んだ。
 一九三〇年ワルシャワ生まれの女性作家の視点は、シモーヌを聖化するのではなく、冷静に距離をとって調べあげ、人生の軌跡と思想のルーツをていねいに辿った先で、ヴェイユの深い問いかけと向きあっている。

◎笠井潔『例外社会』(朝日新聞出版刊)
 すでにブログで触れたので、詳細は略。

◎DVD『グレン・グールド バッハ・コレクション』(ソニー・ミュージックエンタインメント)
Gould  昨年映像集大成のDVD「ザ・グレン・グールド・コレクション」が出たが、3万円ということもあり買いそびれていた。そのなかからバッハ演奏のみを収録順に収めたものが、今春発売された。価格2,100円はお買い得。
 「ブランデンブルグ協奏曲5番」をうなりながら指揮し弾いていたり、オルガンでしか聴いてなかった「フーガの技法」のハープシピアノ演奏があり、ユーディ・メニューインと競演しピアノを前面に押し出しす「ヴァイオリン・ソナタ」を弾いたり、「平均率クラヴィーア曲集」を珍しくハープシコードで弾いたり。
 圧巻は、カナダ・シムコウ湖畔の別荘でパルティータ2番を弾くシーン。かつて映画やテレビでも観たフィルムだが、彼は多くの聴衆を前にした演奏会ではなく、こうして独りで黙々と弾くほうがさらに躍動的で似合っていることが改めてわかる。

バーデン・パウエル&ヴィニシウス・ヂ・モライス『アフロ・サンバ』
Afrosamba_4  1966年にインディー・レーベルから出されたもの。今年の再発で初めてアルバムを手にする。洗われたボサノヴァとは異なり、ブラジル・バイーヤ地方の歴史的屈折と土俗的広がりを感じさせる名盤。

2009年12月12日 (土)

つくば六所の古民家

 見覚えのある風景と建物の写真が載っていた。先日、新聞に挟みこまれていたフリーペーパー「リトルヘブン」(山田養蜂場刊行)の紙面上でのことだ。この春亡くなった編集者入澤美時さんが再生した、つくばの六所の古民家の姿で、その広い敷地で舞いが催されているものだった。後方の古民家二階から舞いを観る人の姿も写っていた。
Rokusho2  そこは、かつてボロボロで廃墟同然だったのだが、二重梁の美しさに魅せられた入澤さんが、紹介してくれた建築家安藤邦廣さんと組み、茅葺きの素材を自分たちで揃えて屋根を葺きなおし、改築して二年半ほど前に再生させたものだ。

Rokusho1  六所の古民家を訪ねたのは、ちょうど一年前のことになる。入澤美時さんが『東北からの思考』(新泉社)出版記念パーティをそこで開いたときだった。
 冬近い冷えこみの強い日、昼から開かれた集いは、地域で採れた野菜料理などが並べられる大皿の前で、土地の酒やワインで乾杯があり、共著者である森繁哉さんの舞踊が庭で演じられた。
Rokusho3  そのあたりから、冷たい雨が降り出し、酒宴は古民家のなかで暖まりながら進められた。

 わたしは、同じく参加していた旧知の友人とずっと酒を飲みながら語りあっていた。そこを退いたのは午後八時ごろのことなので、六時間以上ずっと日本酒を飲み続けたことになるが、旨い酒だった。酒もよかったし、古民家の醸す雰囲Rokusho4 気もよかったし、六所の空気も美味しかったからだろうが、なにより、たくさんの参加者に応対する入澤さんの笑顔がよかったせいだろう。
 それから数ヵ月後の今春、入澤さんは急逝してしまった。

 さて、その六所の家が、入澤さん亡きあと縁あって、別の方に引き継がれたようだ。「リトルヘブン」掲載の写真を見ると、集落の人たちが集うなかで、庭に設けられた舞台で舞いが奉納されている。
 こうして「人々の交流の場」として生き続けていることがうかがえるシーンを誰よりも喜んでいるのは、六所の家を再生させた入澤さんだろう。

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安藤さんから「茅葺き」といわれた瞬間、この家は僕のものではなくなるなと思いました。当初から、人の集まる書斎=梁山泊(りょうざんぱく)と考えていましたが、いまやもしかしたら、集落の公民館かもしれません。
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 Slownetの取材でこう語っていた入澤さんにとって、その想いが引き継がれたかたちだ。

◎リトルヘブン記事
http://www.3838.co.jp/littleheaven/200912/index.htm
◎Slownet記事
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/life/reading/interview/200902010942-9275541.html
◎『東北からの思考』
http://toyodasha.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-1b27.html

2009年12月 6日 (日)

毎日新聞に書評

 本日12月6日(日)付毎日新聞の読書欄(「今週の本棚」)に、拙著『村上春樹と小阪修平の1968年』の書評が掲載された。
 
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 全共闘運動の総括は決して少なくはないが、ここまで徹底的に本質的な論理を摘出し得たものがあっただろうか。
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 書き出しはこう始まっている。全文は掲載紙で読んでいただくとして、拙著の内容と思いをよく汲んでくれた紹介になっている。
 その下には『1968年の世界史』(アラン・バディウほか著、藤原書店刊)の評も置かれている。ちょうど「1968年」をテーマにした書が並んだかたちだ。

 ちなみに、紙面左隣には「埴谷雄高生誕100年特集」として、鹿島茂氏と沼野充義氏の『死霊』論、埴谷雄高論が掲載され、横に一葉の写真が載っている。1971年に高橋和巳の納骨後に富士登山したときの記念撮影で、埴谷雄高、柴田翔、坂本一亀の各氏らの姿がみえる。
 毎日新聞「今週の本棚」はいつも充実している。

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