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2008年12月28日 (日)

今年の5冊 2008年 

 今年も昔のものを引っ張り出して読むことのほうが多かった。ニーチェやマルクス、モーゼス・ヘス、イリイチなどなど。その中で今年の5冊。

◎入澤美時・森繁哉『東北からの思考』(新泉社)
 ブログ別ページに記した通り、今年一番の収穫。

◎宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(早川書房)
 今年話題になった若い世代の評論。わたしがとんと疎い若い世代が負う情況と課題がみえてくる。

◎池田知隆『団塊の<青い鳥> ~戦後世代の夢と希望~』
 還暦を迎え始めた団塊世代38人の軌跡と今をていねいに辿ったものだが、全共闘運動について改めて問う書でもある。

◎堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』 (岩波新書)
 丁寧な取材を通じてアメリカの資本主義社会の現状をよく伝えている。

◎福島泰樹『無聊庵日誌』(角川書店)

Buryoan_3  著者25作目の歌集。取材したとき招いていただいた無聊庵がタイ トルに冠されている。

 味わい深い近年の歌が並んでいるが、その中から三首。

  小市民の哀感ここに極まりて
    生きるばらばら死するばらばら

  反復とはあまきリフレイン憂愁の
    キルケゴールの哲理なりしが

  百日紅おれも滑りて咲く花の
    しどろもどろの朝の四次元

◎コンサート・フォー・ジョージ(CONCERT FOR GEORGE)

 ひとつおまけでDVD。
 なにごとも数歩遅れる小生。このDVDは数年前に出されたものだが、この秋にレコファンで入手。
Concert_for_george  ジョージ・ハリスンが亡くなった翌年2002年に行われた追悼コンサートの模様を収めたもの。エリック・クラプトンが主催し、息子のダーニ(お父さんにそっくり!)はじめ、ポール・マッカートニーリンゴ・スター、ビリ・プレストン、ジェフ・リンらが揃い、ジョージの名曲を歌う。
 圧巻は、「While My Guitar Gently Weeps」。リンゴのドラムスを背に、ポールとクラプトンのヴォーカル、そしてクラプトンのギターが泣く。CDではずいぶん聴いていたが、こうしたライヴは、映像でみるとますます胸が熱くなってくるのを抑えることは難しい。

2008年12月26日 (金)

『東北からの思考』

   少しでも地方を旅すれば誰もが目にする駅前商店街のシャッター化、山村・農村の過疎化、集落の解体……。わたしも旅や取材でそうした光景をかなり目にし、ショックを受けてきた。
 人口が国内で少ない山形県内でも最も少なく、しかも高齢化比率、過疎化比率が高い最上郡の八市町村となれば、深刻の度は増す。
Tohokukaranosikou_4  その最上エリア内のさまざまな場に立ち、歩きながら対談するのが、舞踏家で東北芸術工科大学教授の森繁哉さんと、編集者の入澤美時さん。二人はそこで風景を見、匂いを嗅ぎ、手で触り、舌で味わいながら、言葉を交わす。

 テーマは、明日の希望が見えず崩壊が進む集落、そこに住む「じっちゃん、ばっちゃん」たちの農業をいかに再生していくか――。
 そう問うとき、陥りがちなのは、集落や人の総体、二重性、闇を無視して都会人の一方通行的表層視線からのアプローチで、わたしも含め、その陥穽から免れがたい。しかし、そんな視線を粉砕した地平に立って新たな方策を具体的に提起しようとするのが本書。
 たとえば、かつての原風景、集落のイメージに対立するものとみなされるコンビニをたんに悪しき近代主義として排除するのでなく、現在の民俗学的視点も採りいれて考察する。他方、スナック・演歌や隣組や結いを前近代的遺制として排するのではなく抱えこみ、逆にそこから突破口を見いだそうとする。

 「じっちゃん、ばっちゃん」に象徴される農業(アジア的遺制)を、大型化・広域化が不可避な農業(超資本主義)にどう接ぎ木するかを、進歩主義的歴史観を突き破って、「相互扶助」「無償の贈与」「協働」をキーワードに展開している。

 新庄駅から近い国道の陸橋の上から眺めると、道路の一方にショッピングセンター、反対側に昔懐かしい農村風景が広がる。この日本の地域・地方の縮図のような風景を前に始まった二人の対話は、言葉がじつに豊かだ。
 とくに森さんの言葉には、なかなか接することのできない深みと響きがあり、読者の心身に滲みてくる。それは、森さんが最上の山村で生まれ育ち、今も住んでいて、その身体と心から発せられていることに拠っているのだろう。

 まったくかけ離れた都会に住むわたしのような人間にとっても、じつはとても切実な課題が突きつけられているのだと思う。
 自らの場のことはひとまず措いて善意やボランティアで関わろうとする次元(このことが即座に否定されるべきことではないが)を突き抜けて、たとえば労働(生産)と消費の分裂があまねく都会労働者(生活者)にもたらす悲惨な現実と関係をどう組み替えていくのかという課題(わたし流にいえば「スローワーク」)ともつながっているからだ。

 400ページ近いヴォリュームだが、豊富な写真と注が洒落たデザインで添えられていて、対話の妙にぐいぐいと引きこまれる。収穫の書(新泉社刊)。

2008年12月20日 (土)

「雪の降る町を孤り祈らん」

○三月書房

Shourenin1  雨上がりの冷え込んだ夜、東山の青蓮院へ夜間ライトアップ見物に。
 名物の大楠も照らされている。
 紅葉の最盛期を過ぎていたこともあり、騒がしくないのがありがたい。落ち葉も灯りにひっそり照らされている。
Shorenin4Shoreninn2Shorenin3Shorenin5 

 前回出かけたのは、もう四、五年前だろうか。そのときと同じように、庭園には闇の中から梵字が浮かび上がってくる。
 堂内の襖絵は、かつて比叡山で沢田研二のコンサートなどプロデュースした木村英輝さんが描いたもの。前回来たのはちょうどその絵ができたあとだったか。

Sangatushobou 寺町通の三月書房は人文系・社会科学系専門の書店。古書店ではない。
 今はほとんどなくなってしまった街の小さな書店の店構えで、面積も同様だ。しかし、アジア最大級と言われる東京のジュンク堂で探してもなかった書籍がちゃんと置かれている。ありがたく購入する(『相互扶助論)。
 この店は、京都を訪ねれば必ず寄りたくなる魅力を持Tadasu1っている。入り口脇の小さなウィンドウも楽しい。

 12月まで紅葉を愛でられる糺の森を歩く。

○福島泰樹さんライヴ

 毎月10日は吉祥寺の曼陀羅で歌人福島泰樹さんのライヴ。短歌絶叫コンサートだ。
Fukusimayasuki  昔からときどきライヴで絶叫の喝を受けていたが、一年半ほどまえ、仕事で取材をさせていただいて以来なのでずいぶんご無沙汰だ。
 半年ほど前、案内をいただき渋谷のライヴハウスに出かけたが、会場前には若者たちの長蛇の列。なぜ福島さんのコンサートにこんな……、といぶかしく思いながら、入れそうもなく引きあげたが、どうも彼が教壇にたつ日大の学生さんだったらしい。

 この日は向島ゆり子さんが参加し、ピアノとヴァイオリンでサポート。常連の尺八菊池雅志も。

  シャンソン歌手高英男にはあらねども
    雪の降る町を孤り祈らん
            (福島泰樹『蒼天 美空ひばり』)

2008年12月14日 (日)

『団塊の<青い鳥> ~戦後世代の夢と希望~』

 若者の叛乱が世界的に起こった1968年ごろに青春を送った団塊世代が還暦を迎え始めた。
 その団塊世代38人を、毎日新聞論説委員の池田知隆さんが取材しまとめた本が少し前に出た。『団塊の<青い鳥> ~戦後社会の夢と希望~』(現代書館、10月刊)。

Dankaiaoitori_4  秋田明大(日大全共闘元議長)、戸井十月(作家)、手嶋龍一(外交ジャーナリスト)、道浦母都子(歌人)、鎌田實(諏訪中央病院)から、都はるみ、ガッツ石松、安奈淳、里中満智子にまで及ぶ団塊世代の各氏が登場し、小生もその末席をけがしている。

 たまたま私が図書新聞(2008/12/13号)に寄せた、本書についての書評は以下のように始まっている。

~~~~~~~~~~~~~~~
 数年前のこと。メディアに登場しなくなって久しい秋田明大さん(元日大全共闘議長)の取材記事と写真が毎日新聞に掲載された。紙面をじっと見つめ、ことばにまとまらないさまざまな感慨が湧きあがったことをよく覚えている。「池田知隆の『団塊』探見」というシリーズのひとつだった。
 本書はその連載に加筆しまとめたもので、団塊世代三八人が登場する。上梓するにあたり、秋田さんには再取材を敢行したようで、冒頭にずいぶんページが割かれている。世界的に若者の叛乱が起こった「六八年」から今年で四〇年。その長い歳月と運動の意味を、著者の池田さんが同世代の生き様を通して静かに問う貴重な書となっている。
~~~~~~~~~~~~~~~

 この書評はかなり強引に全共闘運動とのからみでまとめたものになってしまったが、本書自体は、池田さんがもっと幅広い視点から各分野で活躍する団塊世代の人物をていねいに追っている。それが本書の懐の深さで魅力でもあり、ひとくくりにはとうていできない団塊世代の多様な生き方を表している。

 それでも池田さんが本書を秋田明大さんから始め、道浦母都子さんで締めくくっているあたりに、全共闘運動が団塊世代に及ぼした影響の大きさを証左しているよう。実際池田さん自身、「どうしてこんなにまで秋田さんの人生にこだわるのか、正直いって、わたしはこれを書き連ねるわたし自身に驚かされた」(46ページ)とまで吐露している。

 団塊世代、そしてそこにおける全共闘運動の意味を改めて問う好著。

 ★ ★ ★ ★ ★

以下は目次です。

●はじめにーー青い鳥のゆくえ

●第1章「時代を旅して――秋田明大さんのこと」
・中国人花嫁と暮らす元日大全共闘議長

●第2章「自由を求めて」

○戸井十月・・旅するように暮らす
○橋口譲二・・喜びの記憶を世界の子供たちに
○甲斐扶佐義・・美女と猫とボヘミアン
○高橋公・・「ふるさと」回帰を呼びかけて

●第3章「世界に生きる」

○手嶋龍一・・情報戦を生き抜く知恵を
○高見邦雄・・中国の緑化に挑んで
○熊岡路矢・・市民外交を担うボランティア活動を
○朴慶南・・水平線のつながりを

●第4章「孤高のはてに」

○川瀬敏郎・・「無私」に生きる花人
○青木洋・・世界一周を成し遂げたヨットマン
○ガッツ石松・・タレントになったチャンピオン
○小川一夫・・“花咲かじいさん”になった宮大工

●第5章「夢を追いかけて」

○都はるみ・・時代をゆさぶる歌姫
○安奈淳・・・病を乗り越えたオスカル
○豊田勇造・・関西フォークにこだわりながら
○近藤明男・・22年ぶりに再起した映画監督

●第6章「漫画・絵本の世界で」

○里中満智子・・漫画の国際化のために
○安彦良和・・ガンダムからアジアへ
○伊勢英子・・時代と呼吸する絵本を
○永田萠・・妖精ブームの中で

●第7章「女を生きる」

○辻イト子・・「大阪のおばちゃん」のたくましさを
○森小夜子・・人形に向き合いながら
○竹中ナミ・・「障害者を納税者に」と訴える
○残間里江子・・団塊女(モグラ)よ、もっと時代の表面に

●第8章「暮らしの中で」

○鎌田實・・「がんばらない」精神とはなにか
○高橋卓志・・「開かれた寺」の改革のはて
○山崎譲二・・葬儀より手元供養を
○橋本憲一・・料理人塾を呼びかける京都「梁山泊」

●第9章「地域に生きる」

○鈴木常勝・・街角の子に語りかける紙芝居
○竹原信夫・・「景気は気から」という日本一明るい経済新聞社代表
○岩田健三郎・・地域を歩き、地域を見つめる版画家
○元正章・・・・牧師になった書店員

●第10章「新たな生活流儀を」

○水野阿修羅・・男らしさを超える生き方を
○平井雷太・・「教えない教育」が時代の風
○豊田素行・・「スローワーク」を提唱する元ネット編集長
○佐々木成人・・挫折の果てに見えた夢

●第11章 「同時代を深呼吸して――道浦母都子さんに聞く」

●その他
◎団塊群像・・名簿
◎わたしたちの60年・・年表
◎参考文献

●おわりに

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