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2008年11月16日 (日)

経済危機 耳を疑う二つの言

◎「アメリカが世界経済のリーダー」

 サブプライムローン問題に端を発した経済危機をめぐって、さまざまな発言、分析がなされていたが、二人の発言には仰天させられた。

 一人は、米国大統領ブッシュさん。
 いつかどこかで火の手が上がるとみられていたサブプライムローン問題、やはりアメリカの市場から火の手が上がった。一度否決された金融安定化法案が下院に再提案され、なんとか10月3日可決された。
 このときブッシュさんは「アメリカが金融市場を安定化でき、世界経済のリーダーであることを示した」と大真面目で述べた。
 自国、自らが問題を引き起こし、世界経済へ大きな波及をもたらしておきながら、今度はその危機への対症療法のひとつにすぎない金融安定化法案の可決をもって、「世界経済のリーダーであることを示した」と堂々とおっしゃる
 国内向けの発言だろうが、この人は世界にどのように介入しても、すべては国内向けでしかないのかもしれない。アメリカが「世界のリーダー」であること――それが彼にとって第一義的なことなのだろう。

◎「自由は手放すべきではない」

 もう一人は、東大経済学部教授の岩井克人さん。ブッシュさんは戦後ベビーブーマーだが、こちらも日本のその世代の人。
 10月17日、朝日新聞朝刊。「経済危機の行方」というコーナーに登場し、インタビューに答えている。
 まずは60年代から優位に立ち始めた新古典派経済学の実験が今回の危機で破綻したと分析する。その上で、資本主義は基本的には投機によって成立しているから、不安定なもので、それは資本主義を支える貨幣自体が純粋な投機だからだ、といつもの持論を展開する。
 ここまでは、彼の経済学論であり、ただうなづくだけだ。
 今後の経済動向については、「より良いセカンドベストを求めるプラグマティズムというか、永遠の実践主義でいかざるを得ない」と考える。これも彼の論からは導き出される方向として理解できる。

 ところが、やっぱり……。最後に出てくるのが「自由」だ。

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 アダムとイブのたとえでいうと、資本主義の中で、人々は自由という禁断の果実の甘さを知ってしまった。その甘さの中には、もちろん“原罪”的な不安定さが含まれている。でも、自由は手放すべきでないし、もう手放せないだろう。
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 こう、結んでいる。
 聞き手がまとめた記事ということを割り引くにしても、この期に及んでこれまでの著書と同じように唐突に「自由」が突然謳いあげられる。

 岩井さんが無前提に「資本主義は自由だ」と言い張るのなら、たとえば、貧しくて生活苦に喘ぐけれど他国の戦場に出かけて戦闘行為(殺害行為)をサポートすれば高額の生活費が得られるのも「自由」の謳歌だ。それは企業側からみれば、民営化された戦闘行為(殺害行為)を請け負って利潤を上げる「自由」でもある。あるいは、とても返済できそうもないのに住宅ローンを組めて(結局は自己破産し追い出されて)しまうのも「自由」だ。それは企業側からみれば、ほとんど回収不能の債権でも数多く生みだしごた混ぜにして売るだけでべらぼうな利潤が得られ、あとは野となれ山となれでかまわない「自由」でもある。
 アメリカの経済の実状に即して言えば、岩井さんが手放すべきではないと謳う「自由」とはそういうことを基本的に含んでいる。わたしはこれらの事態は「自由」ではなく、「自由」の「転倒」だと思う。本来の言い方でいえば、「自由」ではなく「恣意」にすぎない。
 それを「自由を手放すべきではない」と結語させるのはとんでもない飛躍といわなければならない。
 貨幣は人間社会に不可避的に転倒をもたらすが、今日の「経済学」はそういう事態へ問題を立てる意識を包摂して成立していない。あるいは異和の棘として内側に抱えこんでおくことすらできていない。そういう思考をすっかり排除することにおいて、現在の「経済学」が成立しているようにみえる。
 だとすれば、限定された「経済学」の枠内だけに発言を慎むべきだ。軽々しく「自由」とか「自由は手放すべきではない」などと論を飛躍させるべきではない。
 でも、お得意のカント道徳哲学が登場しないだけ、まだましだったか。

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