« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »

2008年9月15日 (月)

ニーチェ ~沸騰する自意識の空騒ぎ~

 「弱者と出来損ないは亡びるべし、――これはわれわれの人間愛の第一命題。彼らの滅亡に手を貸すことは、さらにわれわれの義務である」
  (西尾幹二訳『アンチクリスト』)

 ほんとうにニーチェさんの書には物騒なことばが並んでいる。
 滅亡に手を貸すのが義務……とまでニーチェさんは言う。余計なお節介だし、恐ろしいことだ。
 このフレーズ、現代でも耳にしたことがある言説であり、それがどんな悲惨をもたらしたことか。
Nietche1  (写真は理想社版ニーチェ全集から)

 ところで「滅亡」するべしとされる「弱者」らを誰が決めるのだろうか。ルサンチマン・ニーチェさん? まっぴらご免被りたい。だれもそんなことを決められない。

 ニーチェさんの書に溢れているのは、過剰な自己意識だ。それはそれで、青春などには強くある現象にすぎない。
 けれども心しなければならないのは、自己意識を昂揚させたり沸騰させたりするために、「賤民」や「蓄群」を措定してそれらを罵らなければならないとすれば、それはもっとも責められるべきルサンチマンの世界というしかない。

★ホームページ更新★

ニーチェというルサンチマン(3)
「あらゆる価値の価値転換」という誇大広告
http://toyodasha.in.coocan.jp/sub7/sub7-24.htm
ニーチェというルサンチマン(4)
過剰な自意識の空虚
http://toyodasha.in.coocan.jp/sub7/sub7-25.htm

2008年9月 8日 (月)

大塚英志+東浩紀『リアルのゆくえ』

 大塚英志と東浩紀の何回かの対談をまとめたもの(講談社現代新書)。
 サブタイトルは「おたく/オタクはどう生きるか」。

 あとがきに、東さんが「なぜ大塚氏はぼくにこんなに苛立つのだろう」と疑問を呈している。大塚氏にはそれなりにあるのだろうが、たしかに大塚さんの猛烈な追及ぶりにやや退けてしまう。
 東氏のあとがきに附記されているところによると、「印刷二日前に大塚氏より申し出があり、氏のあとがきは削除された。また、同氏の提案により、同時に、第一章の三割ほどと本書全体に配された注のすべてが削除された」とのこと。
 なにやら最後の最後でずいぶんと乱暴な措置がとられたようだ。

 論議が多少噛みあっていたように感じられたのは、今年の秋葉原無差別殺傷事件直後の7月の対談をまとめた終章。

 で、東さんはここで「世代間闘争」について触れている。
 同事件に触れて、若い人はとにかく怒っているのだが、その妥当性はともかく、そういう現実が意外に知られていないことを指摘する。

 「先日『ロスジェネ』のシンポジウムがあって、そこで赤木智弘氏が『加藤容疑者は老人の多い巣鴨に突っ込むべきだった』という発言をして喝采が起きる一幕がありました。そういう発言が自然に出てくる状況がある」

 東さんは、そのあたりに危機を感じとって警告を発している。
 若者の一部にそういう物騒な発言があるのだとすれば、怒りや不満をぶつける先を間違えている、としかいいようがない。
 同時に、わたしも含め人生後半を迎えたひとたちも、世代を超えた視線をより意識するべきだと思う。

★ホームページ 更新情報★
ニーチェというルサンチマン
第2回目「貧しき『自己超克』」

toyodasha>知の岸辺にて>
http://toyodasha.in.coocan.jp/sub7/sub7-23.htm

2008年9月 6日 (土)

ニーチェというルサンチマン

 ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ。1844年生まれで1世紀少し前の1900年に亡くなっている。
 百年以上前に亡くなった人物の言説を前向きに評価するならともかく、今さら疑義と批判を投げかけるのはあまり気がすすまない。
 また、彼の文を読んでいると、人間の弱さがもっとも歪んだ形で表現されているようで、気持が沈んでくる。それに、こちらももう限りのある時間を、彼への論評にあまりかけたくはない。

 とはいうものの、最近彼の著作を再読する機会があり、最低限のことだけは言っておくべきだと思う。
 なぜなら、この哲学者の言説は、20世紀前半にはナチズムに利用され(その責の所在の有無についてはここでは触れない)、それが20世紀後半になると現代思想の源流と位置づけられたりと、影響力を失っていないからだ。そしてもっとも根底的なことは、それが、西欧の知がずうっと抱えてきた負の構造がもっともあらわになっていると思えるからだ。
 というわけで、「ニーチェというルサンチマン」をホームページで数回に分けての連載に。

 第1回目は「トリノ露店のおばあちゃんとニーチェ

toyodasha>知の岸辺にて>
http://toyodasha.in.coocan.jp/sub7/sub7-22.htm

« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ