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2008年8月16日 (土)

『おひとりさまの老後』にみる貧しさ

○ハウツー本として情報は網羅されているが

 遅ればせながら、上野千鶴子氏の『おひとりさまの老後』について。

Ohitrisama  「老後」を迎える「おひとりさま」が「こうすれば、あるいはこう心がければ大丈夫」と、「不安」を解消して元気に「老後」を送りましょうとエールを送る書。
 「老後」のハウツー本としては、だいたい世間で流布されている情報が陳列されている。住宅、地域、お金・経済、介護、仲間づくり、財産や遺言、お墓などについてさまざまに目配りして情報を集めていて、それはそれで一般的な情報価値をもっている。ハウツー本として価値を見いだして購入する人が多く出ることもわかる。

 本書のターゲットは、もともとシングル、離婚したり夫が先に逝きシングルになった(いずれなる)女性たちに絞られている。でも、おそらく男性読者も少なくないのだろう。
 長年会社勤めをしてきた男たちが往々にして不器用で、地域デビューもなかなかできないし、したたかでもないし、現役時代の肩書きや名刺を引きずりがちだし、(自分も含め)やっかいな存在であることはたしかだろう。そして、だいたいが女性より早く死ぬことも事実だろう。
 そういうことを前提にして、「おひとりさま」であったり、これからそうなる女性へのエールを送ることは、それなりの情報価値をもっている。

○不評を招く排他的な姿勢

 だが、ひっかかりを覚える点もいつくかある。
 まずは、多くの人たちが感じている一般的な点について。
 仕事がら、わたしも定年後の生き方について取材してきたり、ときにはデータやノウハウについて書いたり、語ったりするようなこともある。そして「老後」の生き方のハウツー本の必要性も十分わかる。みな不安なのだから。
 老いてくれば、収入が減り、死をより間近に感じるようになり、自立して生活できない事態への不安が増す。これは年齢を重ねた人が抱えこむ不安だ。

 しかし、あたりまえのことだが、不安は高齢者だけの「特権」ではない。生きていて抱える不安は、若者であれ、中年であれ、高齢者であれ、女性であれ、男性であれ、変わりはない。若者にはまた別の不安や苛立ちがあり、中年も同様だ。

 で、本書では「老後」に抱える不安の解消を図ろうとする語り口、姿勢が、なかなかに排他的だ。
 本書で送られるエールの先は、これから「老後」を迎える「団塊世代」とそれ以降の、「おひとりさま」女性に絞られている。それ自体はメッセージのターゲティングであり問題ないのだが、他世代や異性、あるいは、経済的により苦しんでいる層への配慮や、つながろうとする姿勢はみられず、むしろ突き放して嘲笑している。それは故意にとっている戦略なのだろうが、あまり好ましいものではない。そのことが多くの反発を買う要因でもある。
 当然、ターゲット以外の世代や性、あるいは厳しい経済的状況に置かれ層や、この社会のシステムについて思考を伸ばそうという姿勢もない。
 まあ、それも書籍のターゲティング上やむをえないと半ばイクスキューズできるのかもしれない。

○若い世代からの批判

 で、今頃なぜこの本について触れるのか。それは雑誌「SIGHT」2008夏号(ロッキング・オン)で、若手の評論家東浩紀さんが、上野氏の論に噛みついていたからだ(東浩紀ジャーナル「言論は世代を超えられないのか?」)。

続きは以下へ
http://homepage3.nifty.com/toyodasha/sub5/sub5-28.htm

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