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2008年5月16日 (金)

酒田小景

○カフェケルン

 都道府県でまだ足を踏み入れていないのは、九州、沖縄を除いては山形県くらいではなかったか。その山形の地に初めて入る。4月中旬のことだ。
 行きは、山形新幹線で新庄まで出て、そこから陸羽西線に乗換える。最上川沿いを下る2両編成の列車。
Img_1753  重い雲が覆う中、川に寄り添ったり離れたりしながらうねるように走る。
 1時間ほどだったろうか、酒田に到着。駅構内には昼食をとれるような店はなく、改札を出て駅前脇の蕎麦屋で昼食。立ち食い蕎麦屋風の店は、昼食にやってきた男達で満員。羽越本線に乗換えて鳥海山近くまで出て、ひと仕事。
 夕暮れ、戻った酒田に宿をとることに。
 駅前商店街をぶらつくが、人影はないし、シャッターを下ろした店がほとんどだ。今日は金曜夜なのだが……。
 小さな地図を頼りに歩き、迷いながら出た中心街は、多少人影を見るくらい。カフェに入りひとやすみしたかったのだが、そもそも飲食の店がほとんど見あたらない。ようやく見つけたカフェに入る。
 ケルン。老ご夫婦がやっているらしい古風な趣きのあるお店。客はもちろん私一人。取材の整理などして、ゆっくりする。
 遅くならないうちに酒田駅近くまで戻り、ホテルにチェックイン。

○本間家美術館

 酒田といえば、江戸時代に河村瑞賢が西回り航路を開いてから北前船の拠点として栄えた港町。いろいろ巡ってみようと計画を立てる。
 翌朝、一番で訪ねたのが、宿の近くに構える本間家美術館
P1010117  元禄時代に開業し、酒田で豪商となった本間家。駅の近くに本間家の別荘と庭園が残されている。「鶴舞園」と名付けられた起伏のある庭園を回り、「清遠閣」と呼ばれる別荘に入る。かつて収拾された美術・工芸品が陳列されている。それなりに豪商だったことがうかがえる。2階に上がり、展示担当の女性にいろいろ話を聞く。

 酒田市中央から最上川を超えて土門拳記念館へ出る計画を立てていたが、ミニバスしかないらしい。1時間に1本ほど出ているという。旅でタクシーには乗らない主義なので駅前バス停に戻り、女子学生風の子に尋ねると、間もなくそのバスが来るはずだという。
 返事を聞いた直後、ミニバスがやってくる。ラッキーだった。

○土門拳・亀倉雄策・勅使河原宏・谷口吉生

 奥羽山脈一帯から集めたたっぷりの水を湛える最上川を超え、新しくできた福祉系大学を過ぎ、土門拳記念館前に到着。

 P1010173土門拳記念館は広大な飯盛山公園内ある。
 谷口吉生設計の建物を眺めゆっくり歩きながら近づく。
 入口は錆びた色っぽい鉄扉が閉められている。閉ざされた倉庫の趣き。一瞬戸惑うが、入口はここしかない。なるほど、どうやら亀倉雄策さんのデザインらしい。
P1010127 今回は、土門拳さんが初めて仏像に出会ったとされる室生寺展が企画展として開催されていた。土門さんらしい視点で、室生寺の仏像が切り撮られている。

P1010142  奥の展示室から眺める庭園は勅使河原宏の「流れ」。石と緑だけで表現されている。春浅いときだったので、笹がまだ緑になっていないが、これもまたよし。椅子に腰掛け、しばし庭を眺める。
P1010164  展示室の中央に土門拳さんの写真集がでんと並べられている。写真集の装幀は亀倉さんだろう。色味、布の質、レイアウト……いずれも素晴らしい。田中一光さんや亀倉さんらのデザインの時代はすでに遠く、現在その質はずいぶん下がってしまったように感じる。
 ミニバスの発着時刻に合わせて、2時間ほど館内をぶらぶら したあと、バスに乗り、街へ戻る。

P1010188  中町に残された本間家の旧宅に寄る。倉敷あたりで見た旧宅と作りはほぼ同じだ。

○人影のない土曜昼下がり

 一番の繁華街と思われる中町を歩く。
 土曜の昼下がりだが、通りにはまず人を見ない。昼食を食べようと思っても、ほとんどの店が閉まっている。スーパーのような店舗の一角にあった立ち食い蕎麦コーナーでランチをすませる。ここも客は私一人。
P1010213 アーケードのある道にも、たまに人をみかける程度だ。うーむ、開いているお店もやっていけるのだろうか。中心街から離れた酒田駅前もシャッター通りになっていた。駅前の広大な空き地は、移転したスーパージャスコの跡地らしい。
 前夜入ったケルンも、お客は私一人だったし……。

○海向寺の即身仏

 館内に誰もいない歴史資料館で酒田の歴史を辿ってみたあと、北の日和山近くにある寺に向かって歩く。
 即身仏二体を安置する海向寺だ。本堂が工事中でシートに覆われている。人影もない。しかし、せっかく来たのだから、これで引き下がるわけにはゆかない。脇の庫裡のベルを鳴らす。
 しばらくすると、奥さんだろうか、出てきて対応してくださる。
 拝観したい旨、伝えると鍵を手に本堂脇のお堂へ。そこが即身仏堂。鍵を開け入ると、ひっそりしたお堂に二つの檀。それぞれを開けて、即身仏を拝観させてくれる。ひとしきりしてくれる説明に耳傾ける。 
 即身仏を前にすれば、不信心ものの私も自ずと手を合わせる。江戸中期と後期の住職の二人だ。
 即身仏の意味についてはいくつか語りたいこともあるが、ここでは控えることに。

○往時偲ばせる料亭街

P1010223  寺の正面には往時は立派と思わせる廃墟。どうやら料亭だったようだが、すでに閉ざされてしばらく時間が経っているよう。
 奥の日和山公園で、少しだけ賑わいを感じた。この街で初めてのこと。桜祭りが開かれているようで、接する神社でも若いカップル数組を見ることができた。

P1010248  日和山を下ると、通り沿いに料亭がぽつりぽつり。往時の料亭街といった趣きを偲ばせている。今も開業しているところ、店じまいしたところそれぞれ。通りは整っているが、とにかく人通りがない。
 人口自体は急激に減っている様子はないので、郊外化が進んでいるのだろうか。ここ数年、各地の駅前商店街を歩くことがあったが、どこでもシャッター商店街化がみられる……。

P1010263  夕暮れ、羽越本線に乗りこむ。夕陽で逆行になる日本海沿いの春景色を眺めながら帰途に。

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