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2007年12月26日 (水)

今年の5冊

◎ウイリアム・クライン『革命の夜 いつもの朝』
 DVD(TOKYO HIPSTERS CLUB

Kakumeinoyoru  「ベトナムから遠く離れて」にも参加している写真家ウイリアム・クラインが撮っていたパリ五月革命時のフィルム。
 学生、労働者たちの街頭デモにアラン・レネらの姿もちらっと見える。大学や街頭での市民や労働者、学生たちの議論。ダニエル・コーンバンディの演説。ルノーやシトロエンの工場労働者らのデモ参加。バリケード風景も流れる。
 昂揚と退潮、既成党と学生・労働者たちの対立。市民同士の議論。原則貫徹と撤退、裏切り、権力と抵抗者の映像がきちんと描かれている。
 5月27日のシャルレティ競技場での集会へ続々と集る学生、労働者たちの姿。そしてアジ演説とそれに呼応した大拍手。このあたりは胸を熱くさせてくれる。

 で、いちばん心動かされたのは、市街戦や街頭行動ではなく、占拠されたオデオン座での自由討論の光景だ。
 ギャルソンの仕事をしている男がインテリ・学生たちに問いかける。自らの窮状を、笑いとペーソスを誘いながら訴えるシーンは、60年代のゴダールフィルムばり。いや、逆か。議論好きのフランス人たちの姿がとらえられている。
 市井の人が占拠され開放された国立劇場にやってきて(いわば解放区だ)、アジテーションでもなんでもない意見を率直に述べ、そこで拍手が起こったり、異論が出たりする……そんな市民どうしのやりとりが展開される光景のなかにこそ、いさましい政治論や革命論とはべつに、五月革命の意味が潜んでいるのではないか。

 五月革命とはなんだったのか、改めて考えさせてくれる貴重なフィルムだ。

◎『遠くまで行くんだ…… 完全復刻版』(白順社)

Tookumade1  1968年から1974年まで6号出された雑誌「遠くまで行くんだ……」の復刻版。それに今回、小野田襄二、新木正人両氏がそれぞれ文を寄せている。
 創刊号には重尾隆四「フランス『五月革命』の拡散と進行」が掲載されていた。新木正人の「更級日記の少女」「黛ジュン」あたりには圧倒的な影響を受けた。
 思えば3号からリアルタイムで文献堂あたりで買い始めている。バックナンバー購入のため、落合にある小野田さんの自宅まで出向いたこともあった。妹さんが、笑顔で丁寧に応対してくれたのが今でも記憶に残っている。そこでも入らなかった創刊号は古本屋で手に入れたのだったか……。
 ところがその後すべて焼失してしまい、数年前亡くなった畏友の書庫にあった3号以降分を形見としてもらっていた。なにかと縁がある雑誌だ。
 現在の新木、小野田両氏の文は感慨深い。付された「解説」が違う方向へ逸れてしまっているのが残念。

◎吉本隆明・中沢新一対談「『最後の親鸞』からはじまりの宗教へ」(「中央公論」1月号所収)

 親鸞が見ていた「宗教」をめぐって。1万年以上前のアフリカ的段階へと視線は伸び、国家論にもつながっている。83歳になった吉本さんは小林秀雄の『本居宣長』を再評価している。

◎ねじめ正一『荒地の恋』(文藝春秋)

 戦後の詩誌『荒地』同人だった北村太郎の物語。53歳で同人田村隆一の奥さんに恋して家を出た北村太郎と、それをとりまく荒地同人たちの物語。
 ときどき登場する鮎川信夫が薬味のような役割を果たしているし、ベールに包まれた鮎川さんの人生も見えてくる。

◎福島泰樹『中原中也 帝都慕情』(NHK出版)

 大正14年3月、年上の女長谷川泰子を伴い京都からやってきた中原中也は、早稲田の戸塚源兵衛に居を構えることになる。福島さんの中也探訪はそこから始まる。
 そして小林秀雄の登場……。

◎シンシア・レノン『ジョン・レノンに恋して』(吉野由樹訳、河出書房新社)

 1冊おまけで。ジョン・レノンの最初の奥さんであるシンシア・レノンの自伝。
 ブライアンエプスタインが死んだとき、ビートルズの4人はみな大きなショックを受けたようだが、とくにジョンが、というのがシンシアさんのとらえ方。
 あくまでも夫を奪われた立場なので、オノ・ヨーコさんへは厳しくなる。離婚する前、外出していたシンシアが、レノンと一緒に食事をすることになり、家に戻ると、そこにオノさんがいた。レノンと二人でヨーガをしていて、ヨーコはシンシアのバスローブを着ていたなんてことも。まあ、いろんな事実が語られている。
 ビートルズ末期のころ4人の録音スタジオにまでオノさんが入りこんでくるという話は当時から知られていて、実際にその後そんな映像も見て、そのころからオノさんにはあまりいい印象を持てないでいる。ちょうど共同性と対(男女)の次元の違いにこだわり始めていたころなので、なおさらだった。
 その想いは、この本を読んで深まるばかりだ。シンシア側から書かれたということを割り引いても。
 と、ゴシップ的な方向にわたしの狭い視線は行きがちだが、ミュージシャンとしてのジョン・レノンをうかがう上でも貴重。

 他に小池真理子『望みは何と訊かれたら』、梅津時比古『冬の旅』が手元にあるが、まだ読んでいないので、来年の楽しみに。
 あとは古典や既刊書しか読まなかった。というわけで、読書にしっかり腰が入っていない1年になってしまった。

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