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2007年5月12日 (土)

国立新美術館のロゴで立ち止まる

Img_0967  ポンピドー・センター所蔵作品展(「異邦人たちのパリ」)を観に出かける。場所は六本木に新しく建てられた「国立新美術館」だ。初めて入る(そういえばポンピドーさんはたしか1968年当時ドゴール体制下の首相として、パリ5月革命を抑えにかかった政治家でもあったような。フランスも政治家の名前を冠すること、好きですね)。

 乃木坂駅を降りて地下の道を進むと、案内表示が。目に入るそのロゴデザインらしきものがどうもひっかかる。
Img_0972  座りがよいとは言えないし、といってそのアンバランスが別のなにかを生む効果があるわけでもない。むむむ……。これ、どこに置いてもなかなか難しそうだ。そう感じるのは私一人だろうか……。

Img_0979  「異邦人たちのパリ」を観たあと、口直しとミーハー根性で、夕暮れ、すぐ近くの東京ミッドタウンへ。
 六本木ヒルズのような、これ見よがしの“成金”“最先端”趣味は抑制されているところに、少なくともヒルズよりは好感がもてそう。
Img_0987  安藤忠雄さん、イッセイミヤケさんらが手がける「21_21DESIGN SIGHT」を覗く。 Img_0990_1

 夕食をとろうとミッドタウン内を探すがどこも満員。
 フランシス・コッポラの名を冠したコッポラズヴィノテカもある。両側にワインボトルがぎっしり並ぶほの暗いエントランス。そこをしずしずと抜けて店内に入ってみると、こちらも予約満員とのこと。
 結局六本木交差点近くまで出て香妃園へ。

 さて、あの「新美術館」のロゴデザインはいったいどんなお方が手がけているのだろうと、帰宅してからネットで調べてみた。
 建物の設計は黒川紀章御大だとわかる(書き出すと長くなりそうなので、黒川さんについては省略)。
 でロゴデザインは、「今をときめく」佐藤可士和さんだそうだ。業界ではなにかと話題の方のよう。
Logo  「『新』という日本語をモチーフに『新しさ』『先進性』『独創性』『進化し続ける精神』を象徴した表現をしています」とのこと。
 漢字を用いることに異論はまったくない。でも、そのデザインが……。散漫で情けない感じが、「新しさ」「先進性」「独創性」「進化し続ける精神」を示しているのだろうか。わたしには、どうしてもそうは見えない。むしろ「新しさ」が必ずしも「進化」を意味しないことをあたりまえに証左しているようでもある。現在を超えようとする運動として芸術はあるだろうが、そもそも「進化」なんてないのだし。

 アートディレクターとしては、なにはともあれ目立たせなくてはならないのだろうが、こういうふうに目立っても……。国立だからお役人さんもよしと判断したのでしょうが、このロゴデザイン、ずうっと固持するつもりなのだろうか。

2007年5月 4日 (金)

マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶

○“いとしのマルチェロ”の素顔

 「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」の試写を観る機会を得た。

 20世紀後半イタリアを代表する名優、マルチェロ・マストロヤンニ。俳優としての実像、家庭人としての実像をさまざまな証言と映像で浮き彫りにする作品だ。

Amaituioku3  映画はいくつかの要素で構成されている。
 ひとつは、かつての名画のシーン。これがときどき挿入される。そんな映像の断片が流れるだけでうれしくなる。
 つぎに、彼を撮った名監督や共演した俳優たちの昔のコメントが入る。そして現在のコメントも。
 彼自身の若いときのインタビュー映像も柱のひとつになっている。
 さらに、彼が遺した二人の娘たちのコメント。一人はなんとカトリーヌ・ドヌーヴとの間の娘だ。いやはや、マルチェロって男は。
 “いとしのマルチェロ”の素顔に、いろいろな面から光があてられている。

 ルキノ・ビスコンティ、フェデリコ・フェリーニ、ピエトロ・ジェルミ、ヴァレリオ・ズルリーニ、エットレ・スコーラなどそうそうたる監督たちが登場。
 ミシェル・ピッコリイヴ・モンタンの映像だって、ちらっと出てくる。

○クラウディア・カルディナーレの告白

 彼と共演した女優たちの挙げるとすごいものがある。
 ジーナ・ロロブリジータ、ソフィア・ローレン、クラウディア・カルディナーレ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ブリジド・バルドー、ジャンヌ・モロー、モニカ・ヴィッティ、フェイ・ダナウェイ、アヌーク・エーメ、ラクウェル・ウェルチ、アニー・ジラルド、アンナ・カリーナ、ロミー・シュナイダー、マリナ・ブラディーなど。世界中の美女たちがずらりと。
 その中の何人かが、この映画のためにインタビューに答えている。

 最近のクラウディア・カルディナーレさんが登場している。
 「言ってもいいかしら……」とさらりとことわった上で、「彼はわたしのこと、好きだったのよ」とカメラの前で明かしている。
 パンフレットを見ると、当時彼女には恋人がいたらしいが、マルチェロは、彼女と何度もキスをしたいので、そのシーンを撮り直すべく策を弄したとか。
 ほんとにイタリア男ですなあ。

○ママンの料理をドヌーヴに

 フェイ・ダナウェイとの熱愛は知らなかった。

 誰かが明かしていたが、カトリーヌ・ドヌーヴのところへ出かけるときは、母親の作った弁当を毎度持参したという。「ママンの料理は世界一」としきりにPRし、食べるように促したという。いやはや、ママンが一番の正真正銘のイタリア男。たぶんカトリーヌ・ドヌーヴさんは退いたことだろう。
 でも、なんだか憎めない男。

 私が観たことのある作品は、「汚れなき抱擁」「昨日・今日・明日」「8 1/2」「異邦人」「ひまわり」「特別の一日」くらいだろうか。多いとはとても言えない。フェリーニの「8 1/2」は、二、三度は観たが、必ず途中で居眠りをした記憶がある。

 この映画は“いとしのマルチェロ”ファンならずとも、みておきたい映像。20世紀後半のヨーロッパ映画の厚みを改めて感じることができる。

 正義と悪を単純に切り分けて戦争やアクションを撮って自己満足している(ように追い立てられている)映画文化にはうんざりで、21世紀にはもっともっとヨーロッパ映画に力を盛り返してほしいものだ。
  (ロードショー公開は初夏予定)

2007年5月 1日 (火)

福島泰樹さんの無聊庵

○下谷・法昌寺へ

 ひと月以上前のこと。
Korenkyou  山手線鶯谷駅を降りる。十代半ばまではいつもこの駅で乗り降りしていた。跨線橋に立ち線路を眺めてから、下谷方面に下がる。左手にキャバレーだったかダンスホールだったかが、たしか大きく構えていたはずだが、見あたらない。なくなったようだ。しばらく前まではあり、よく残っているなと感慨に耽ったものだが。とうとう消えてしまった。
Ie  しかし昔の坂本二丁目あたりを歩くと、古い構えの住宅もぽつりと残っている(写真)。

 そんな街並みを眺めながら、仕事で下谷の法昌寺へ向かう。現代短歌の歌人・福島泰樹さんが住職を務めるお寺だ。
 短歌絶叫コンサートを30年以上続ける福島さんのライブには何度か出かけているので、会うのは初めてではない。
 福島さんは、早大の短歌研究会に入ってから現代短歌を始め、『バリケード一九六六』で歌人としてデビュー、以降短歌を絶叫するコンサートをずっと続けてきた。
 現在は下谷七福神のひとつ法昌寺の住職をしながら、前衛的短歌の創作を続けている。

 この人は死者を歌うことが多い。
 死者をうたうことで、志半ばで逝った人の心を継ぎ、かつ自らの表現の幅を拡げている。
 下谷の生まれで、坂本小学校を出ている。こちらも下町生まれで下谷にも近かったので、福島さんの世界には近しいものを感じていた。
 インタビューのとき、小学校について触れると、坂本小学校は閉校になったのだという。でも人々の記憶である建物だけは残してほしいと、10年前閉校のとき「さらば坂本小学校コンサート」を、同校先輩・唐十郎さんらを呼んで開いたそうだ。

○時間の止まった小さな空間

 1時間半ほど、インタビューではていねいにお話をしてくださった。
 ひととおりに取材を終えると、案内してくれるところがあると言う。
 門を出て表通りへ回ると、境内の角に接して2軒ほど、木造の小さな家屋が建っている。昔の小料理呑み屋風の家構え。
Hondana 戸を開ければ、小さなカウンターが伸び、奥は階段になっている。回りこむ階段の下は小間になっている。昔風の小さな呑み屋の作りだ。
 壁に本棚を設け、本がびっしりと並んでいる。

 2階にも案内していただく。
 小部屋が数室ある。そのうちのひと部屋を、福島さんは写真現像の暗室にしている。写真も本格的で、『中原中也 帝都慕情』でも自身の写真をカバーに使用している。

 根岸の芸者さんだった女将が亡くなり空いた空間を、福島さんは無聊庵と名づけ、隠れ家として利用し始めたのだという。
 時間が止まったような空間。

 しばし話しこんでいると 「呑もうか……。ちょっと早いか……」と、福島さん。サービス精神の人なのだ。腕時計の針は午後3時半。ありがたいお言葉で受けたいのだが、まだ早いのと、インタビュー後はすぐにその感触をまとめたいので、遠慮する。いずれ一献傾けさせていただこう。
 下谷、不忍池あたり、浅草など下町のこと、大学闘争のこと、『弔い』に登場する人物のこと、『中原中也 帝都慕情』の「戸塚源兵衛」のこと……交わしてみたい話題はたくさんある。

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