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2007年1月 2日 (火)

2007年 団塊世代が定年を迎え始める年

○5紙を比較

 高年齢者雇用安定法などにより、定年延長や再雇用等で一斉退職という急激な事態は避けられそうだ。とはいうものの、団塊世代の定年が今年から始まる。
 そこで、2007年を迎えた元旦、新聞各紙が「2007年問題」あるいは「団塊世代」をどのように扱っているのかを眺めてみた(いずれも東京売)。

朝日新聞
 別刷り12ページの「個性輝く団塊」という特集を組んでいる。
 定年後に進む個々の事例がなかなか豊富だ。地域デビューして活躍、海外移住、就農、経営指導、シニア留学、旅行添乗員、マラソン、ウォーキング……。役立ちデータも添えられているので、充実している。
 団塊世代へのアンケートデータもある。

日経新聞
 「『2007年問題』はどこへ」といった7段ほどの記事。60歳になってもうひと花咲かせようという人が増えているとする。その背景として、法改正で企業が定年延長、再雇用制度を採り入れたり、人手不足を団塊世代に頼ったりする動きがあることを伝えている。特集というわけではなく短い記事ながら、これから働くということについて、コンパクトにまとめてある。

毎日新聞
 「生きる」という別刷りで「団塊世代」を8面で特集している。
 木暮徹・こぐれひでこさん夫婦、テリー伊藤・高橋靖子さん夫婦が、それぞれこれからの人生への思いを語る。夫婦で語らせているところがみそ。
2007newspaper_1  ほかには、ユニバーサルデザインのこと、海外移住、語学挑戦や旅行術などが事例紹介されている。
 また東京エリア版で、団塊世代と団塊ジュニアを、立松和平さんと娘の山中桃子さんを取り上げて追っている。

読売新聞
 テレビ番組を中心にしたエンタテイメント紹介の別刷りの中で、「フォーク30選」という特集を2ページに渡り組んでいるくらい。それも音楽CD会社との広告企画色が強い。

東京新聞
 地域の「東京版」、「アンチと」いうコーナーで5段で「団塊が源流」という記事がある程度。
 中味は団塊世代というより全共闘的な、あるいはヒッピー文化的な視点でとらえられている。そうしたムーブメントがたんに挫折したのではなく、撒かれた種が芽吹いてもいる、という視点が他紙と比べると新しい。

 というわけで、朝日新聞と毎日新聞の別刷りが質量では充実していた。

 改めて思うが、「団塊世代」をひと括りにすることはなかなか難しい。確かに世代として、歴史的な規定は受けている。戦争と戦後の荒廃の匂いを知り、復興の時代をともにしてきた。アメリカ文化の影響も多大に受けてきた。経済成長、オイルショックを経てバブル、そして50代でバブルの崩壊に直面する……生きた時代の共通項はたくさんある。
 でもそれは共通項にすぎない。向いている方向や趣味、こだわりはまちまちだ。たとえば団塊世代のシンボルとして語られやすい「全共闘運動」だって、それなりに重い意味をもったのは同世代内でせいぜい5%前後だろう。
 ばらばらなのだ。ただ昭和22年生まれから24年生まれに限定しても680万人が存在するというその大きさを無視できない。だからこそ、旅行業界、金融業界、衣料業界、住宅業界……、地方自治体等が、大市場として必死に狙うことになる。
 墓場に入るまで「市場」として狙われることになる。塊として市場の大きさは他世代を圧倒しているのだから。
 だからだろう、各紙ともに団塊世代向け広告はそれなりに揃っていた。

○スローワークを視点にして
 
 テレビでも大晦日に団塊世代の今後についての番組もあった(テレビ東京)。
 そこで、新聞、テレビも交えての感想を少々。 

 特集で出てくる事例はそれぞれヒントを与えてくれるものだ。
 ただ少し気になったのは、たとえば生活費が安いからアジアなどに移住しよう、という発想。
 たしかに決して多くはない年金でどう暮らすか、それは切実な課題だから、その方途をあれこれ考えるのは当然だ。そのひとつの選択肢として費用を圧縮できる海外(アジア)などに移住するという論はわかる。受け容れる当地の行政も歓迎しているという。
 しかし、移住して何をするのか、あるいはその地域でどのような関係を形作るのか、ということは問われる。
 生きるということは死ぬまで社会(他者)と関係をつくることだ。夫婦で出かけても夫婦だけで社会は円環しない。あるいはいずれどちらかが先に亡くなる。
 海外移住であれどんな場所にあっても、社会とどう向きあうかは問われつづけるのであって、その問いに明確に応えられる回答を持っておくことは必要だ。

 40年間前後、ばりばりで働き続けてきたのだから、定年後は好きなことに打ち込む、というとき、それはそれで個人の選択であり、他者がどうこう言う筋合いではない。
 「時は金なり」と現役時代徹底して働いてきたんだから、定年後(余生)は退職金や貯えたお金、年金で好きなことで趣味三昧……。現役時代は「働くこと」100パーセント、定年後は「働くこと」0パーセント(「働かないこと」100パーセント)と考えても不思議ではない。
 現役時代は“会社人間”(生産者側)になってしゃにむに頑張ってきたんだから、定年後はお金を使うだけの消費者に徹すればよい、ということにもなる。

 ただ、それは生き方として違うのではないか、と少なくとも自らにはそんな問いを投げかけている。
 働き方をめぐる、従来のそういう構図を組み替えていくことがこれからの社会に求められているのではないか。そういう構図をうち破る働き方を、定年後の生き方に組みこんでみるべきではないだろうか。

 消費資本制の今日の社会における生きづらさは増している。働くことがもたらす心身への疲弊度は増している。非正規雇用者の増大、ニートの存在、30代からのうつの人の増大……。
 これまでの働き方「時は金なり」のスタイル、効率最優先主義のありようによって社会の歪みは肥大している。それらを少しでも変えていく。あるいは変える主体になれないまでも、地域などで問題点のほころびを縫う手伝いくらいはする……そんな力が、団塊世代に限らず、これからの60代以上の人には求められるのではないだろうか。
 むしろ、つながりと関係性、質を重視して働く。そんな活動が社会、地域で求められているのではないか。それを私はスローワークを名づける。なにも現役時代のようにぎんぎらに活動する必要はないけれど、力を提供していく。もちろん、スローワークとはアクション、動作の動きの遅さを第一義とするものではない。
 働き方の見直し作業は、最前線の企業にあって子どもの教育や住宅ローンを抱えなかなか余裕をもてない30代~50代半ばの中年層にとっては、残念ながらなかなか難しい。だからこそ、60代あたりが、今日の社会の働き方に疑問を投げかけ、少しでも別のスタイルへと組み替えていく。スローワークする。
 消費者としてのみ生きるのではなく、緩やかにでも働き、社会とつながり、社会の組み替えに役立つ。
 そんなあり方、働き方、活動の仕方が求められるのではないだろうか。

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