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2006年10月24日 (火)

「枯葉」Autumn Leaves

 陽の落ちるのがどんどん早まる。日のリズムが年のリズムと重なり、秋の夕暮れは心と体に滲みてくる。
 ジョセフ・コスマが作ったシャンソン曲「枯葉」の季節、到来。
 愛され続けた名曲は、ジャズでしばしば演奏される。ジム・ホール、キャノンボール・アダレイ、ウィントン・ケリー……、まだまだたくさんあった。サラ・ヴォーンの名唱も。
 偏愛する三つの「枯葉」演奏を挙げてみよう。

○ビル・エヴァンスの「枯葉」

 ビル・エヴァンスは生涯に何度も「枯葉」を演奏しているが、やはり1959年暮れも押し詰まった12月28日にスタジオ録音された「Portrait in Jazz 」に収められたものが一番だろう。ドラムスはポール・モチアン、ベースはスコッロ・ラファロのトリオ。
Portraitinjazz  スコット・ラファロとのインタープレイは、至上のものといってもよい。
 ビル・エヴァンスは、歳を重ねるごとに生き急ぐように演奏は前のめりになっていった印象を受けるけれど、このころのエヴァンスは、ラファロのベースを得て、インタープレイの世界を存分に聴かせてくれる。

 take1(ステレオ)と2(モノラル)が現在では同一アルバム収められていて、甲乙付けがたいが、わたしはtake1を推したい。
 take1。ひととおり旋律をやり終えたあと、ラファロのソロがあり、そのあとエヴァンスとラファロによる即興のインタープレイがあり、モチアンもそこにからんでくる。
 しばらく続く即興から、エヴァンスがぐいと主題に引き戻し、ラファロがそれを追うようにしてベース音をしならせて歌いあげる。このあたりのうねるダイナミズムは何度聴いても飽きることがない。
 自動車事故で間もなく逝ってしまったスコット・ラファロとエヴァンスの束の間の出会いが放った美しい火花。

○ステファン・グラッペリの「枯葉」

 初めて聞いたのは、もう20年近く前だろうか、池袋の雑踏、小さなビルの3階にあったジャズの店だった。平日の昼下がり、学生と中年サラリーマンがなんだかわびしそうに腰かけていた。その中に馴染んでいく。すきま風が店内を吹き抜けていたから、冬だった。そんなとき、ステファン・グラッペリのヴァイオリンは心にじわっと染みこんできた。
 彼のアルバム「アフターヌーン・イン・パリ」の最後に収められている。ピアノもベースも知らないプレイヤーだが、深まる秋のもの哀しい世界を切々と歌いあげている。

○イヴ・モンタンの「枯葉」

 シャンソンの古典なので、当然多くのシャンソン歌手が歌っている。
 ジュリエット・グレコのもいいが、やはり歌は本家イヴ・モンタンということになる。
 10代終わりのころからモンタンの歌を聴き、映画も観ていた。アラン・レネ『戦争は終わった』や、甘めのクロード・ルルーシュ『パリのめぐり逢い』など。なかなかいいなとは思っていたが、フランス特有のねっとりした感じか、あるいは中年男らしい愛撫のしぐさにか、内心少し反発もあった。
 40代になってからだろうか、モンタンのよさがしっかり見えてきたのは。『戒厳令』やゴダールの『万事快調』に出たり。『ギャルソン!』に出演していたときは、もう60歳を超えていた。
 ちなみに、奥さんで女優のシモーヌ・シニョレは映画だけではなく、ミシェル・フーコーらと一緒に街頭デモなどにも参加していた。
 二十歳前後の感性にはもの足りなく感じたものだが、ジャック・プレヴェールの詩とともに淡々と歌うモンタンの元祖「枯葉」、歳とともに次第に滲みてくる。

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