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2006年5月25日 (木)

夜の上賀茂・北山通

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 京に住む、学生時代の友人と呑む。
 京には学生時代の友人が二人いる。この日会ったのは、京の伝統産業を継ぐ三代目になっている友人だ。彼と酒を呑むのは社会人になってから2度目だろうか。
 上賀茂の閑静な住宅街にクルマで連れて行かれる。店の灯りはどこにも見当たらない。
 少し歩くと一軒家に小さく店の灯り。こじんまりした割烹だ。先斗町あたりで板さんをしてきたらしいご主人と奥さんのお店に案内される。
 気張らないけれど、静かでほっとする空間。客はわれわれだけだ。
 ビールで喉を潤すと、豆腐の突き出し。これが旨い。ちょうどいい間をもって、ちょうどいい流れで器が運ばれる。梅タレをかけた茶碗蒸しも絶品。私はグルメを名乗れるものではないが、過度な細工をせず、ごく自然にいい食を供してくれる。うれしい。

 この友人は、拙著『ほっこり京都時間』で、ちらっと登場してもらっている。と書いたが、どうも記憶が定かでない。最後にカットしたかもしれない。いま手元に本がないのでわからない。

 学生時代、彼も含め、たまたま集まった4人で高田馬場の駅近くで遅い昼食をとった。ロシア料理の店だったろうか。
 わたしにしては、ちょっとふんばった店だった。というのも、いつも学生街でスタミナライスといった手軽でボリューム満点のランチしか口にしていない、東京プロレタリア息子にとっては、テーブルにクロスが敷かれる滅多に入らないレストランだったから。
 で、なにをオーダーしたか記憶は薄れているのだが、4人の前にお皿が運ばれてきた。腹をすかせていたわれわれは、がつがつとフォークで食べ物を口に運び一気に食べ終えた……。そのはずだった。
 満腹となり、天井を見遣って、ふうと充足の溜息をついたあと、テーブルの上に目を戻した。
 すると、他の3人が平らげたものとは異なり、いままさに食べ始めたばかりといった皿がひとつあった。その皿の前に座っていたのが、京のこの友人だ。ゆっくりと食を続けていた。
 当時、わたしなどは、食い物の苦労を知らない京都のぼんぼんだなあ、と半ば呆れていたのだが、いま思えば、食をじっくり味わう、根っからのスロースタイルだったのだ。そう思う。だからこそ、苦労しながらも、彼はしっかり伝統産業を技と機械も含めて復元し守り、再生・創造しようとしている。

 そんな昔話も交え、カウンターで酒を呑む。共通の友人の二人の死者のことなども。

 学生時代に、彼の家に泊めてもらったことがある。
 大阪で万博が開かれた年だ。岡本太郎の芸術論にはずいぶん影響を受けたけれど、万博の太陽の塔には首を傾げていた。万博は社会の矛盾を隠蔽するものだ、と決めつけて大阪のどこかの公園で開かれた反博(ハンパク)に参加するのが目的の旅だった。でも、その反博というイベントは、公園にテントを張りめぐらしただけのじつに貧弱なもので、参加しながらも、わびしさを味わったものだ。
 ときはもう、1970年……。三波春夫さんの笑顔と歌が日本中を席巻する。潮はずいぶん引いていた。

 さて、当時彼の家は、西陣の今出川通に面してあった。入り口は狭いけれど、中に入れば、どんどん広くなる、典型的な京町家だった。もちろん坪庭もあった。
 泊まったとき、ご母堂にはたいへんお世話になった。日本の母の典型という感じだった。ふっくらとしていつも笑顔を絶やさない。さくたんの子どもを産み育て、子どもの友人がやってくれば優しくもてなしてくれる、無償性を生きる、そんな女性にみえた。そのご母堂もいまはない。その町家は壊され巨大マンションになってしまっている。残念なことだ。

 店を出ると、雨雲が覆っていた夜空に少し晴れ間が見える。田圃では蛙が大合唱をしている。田の中をサギだろうか、静かに歩いている。北山通にほど近いところでこんなのどかな田圃がある。京野菜が作られているのだ。これが京のよさでもある。
 北山通を抜けて賀茂川のほとりのカフェでコーヒーを呑みながら、さらにあれこれれ話をする。

 京は魔界の地だ。一条戻り橋あたりだけではない。たとえば賀茂川をもう少しあがった志久呂橋あたりでは、夜、小さな着物を着た男の子が橋に現れるのを、少なくない人たちが見かけるのだそうだ。といった話まであれこれ耳傾ける。

 別れてから、雨に濡れた北山通を歩く。夜11時前の北山通、ほとんどの店はすでに閉められている。ライブハウスのMOJOWESTには灯りがついている。たしかロックの店。キャロルメンバーだったジョニー大倉の写真だろうか、飾られている。
 通り沿いになんとラブホテルを発見。というか、しっかり存在をアピールしている。以前はなかったような……。東京でいえば、青山通りに面して建っているようなものだ。北山通の商売、苦戦しているのかな。

Hokkori

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