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2006年4月13日 (木)

ステファン・グラッペリ「枯葉」

Paris3  ヴァイオリンという楽器、妙にベタついていやだなと感じるときと、素直に心にしっとりと入ってくるときがある。
 ステファン・グラッペリというフランスのジャズ・ヴァイオリニストの場合も同様で、すこしねっとりしていてベタついて困るな、ということもないわけではない。しかし「アフターヌーン・イン・パリ」(MPS)における「枯葉」は、じつに心にしみ入る。
 ピアノもベースも名を聞いたことのないプレイヤーだが、パリで弾いていてステファンと気心の知れた仲間なのだろう。「枯葉」という名曲を得て、彼のヴァイオリンは流れるように歌う。

 はじめて聴いたのは、もう15年前後前のことだろうか。平日の昼下がり、池袋のジャズの店だった。だいたい平日の昼下がりのジャズ喫茶って、メインストリームから外れた、少し哀しい空間だ。学生崩れ、怠けているサラリーマンがぽつりと座っているくらいだった。私も仕事に就いていない短い間のときだった。
 冬、その店は西口の小さなビルの3階あたりにあった。ドアには隙間があり、冷たい風が流れこみ、体が暖まらなかった。
 ヴァイオリンの「枯葉」が流れ始める。ビル・エヴァンスのように旋律を大胆に壊さずに活かしながら、切々と歌い上げていた。
 以来、愛聴曲に。

 池袋にはジャズの店はなかなか育たない。というか継続しない。
 中上健次もどこかで名を挙げていたが、「キス」という店があった。東口の小さなビルの上の方。60年代末にあったその店は、70年代に消えた。夏、冷房をガンガン効かせていて、「寒いね」と隣にいた女の子と体を縮めた。なぜか、京都から一人で旅に来ていた子だった。
 そういえば60年代後半、西口のVANの上にもジャズの店があった。ウエイトレスが長い髪で目の大きな子。で、無愛想。それが魅力だった。VANが経営していたのではなかったか。70年前にはなくなった。

http://toyodasha.in.coocan.jp/index.htm

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 ―「僕は馬鹿です。」  これは謙遜したり自嘲したりしているのではなくて、本当は知的な人間であると思っているのに逆説的にいうことで、これから書くことの真実味を深めようと画策しているのでもありません。いや少しくらいは画策しているかもしれません。  でも、本当に馬鹿なのです。泣きたいくらいに―。  かつて「本」は、もとい「活字」は、とても尊いものでした(「かつて」とはだいたいおお�... [続きを読む]

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